第19回「希望の翼」(香港)

期待胸に香港入り 148人交流、夜景も堪能

障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第19回希望の翼」(茨城新聞社、茨城新聞文化福祉事業団主催)の一行148人が26日、成田空港から香港へ出発した。
参加者は障害者とその家族、ボランティアなどで、県内各地から同空港に集合。同日午前、2便に分かれて現地に向かった。到着後は夕食を味わいながら参加者同士の交流を深め、街の夜景も堪能した。
旅行は同日から29日まで3泊4日の日程。摩天楼を一望できる「ビクトリアピーク」など名所・観光地を巡るほか、ショッピングも楽しむ。
東海村から参加した渡辺順子さん(42)は「(旅が始まりわくわくする。おいしいものを食べたりしたい」と、期待に胸を膨らませた。

(2016年11月27日付茨城新聞掲載)

香港に向けて出発する「希望の翼」一行=成田空港
「ビルと海、風景に感動」 香港島最高峰を散策

障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第19回希望の翼」の一行148人は27日、香港島の最高峰・ビクトリアピーク(標高約550メートル)からの眺望やビーチリゾート「レパルスベイ」の雰囲気を堪能した後、ショッピングセンターで買い物に熱中した。昼食は上海料理、夕食は広東料理を味わった。
ビクトリアピークでは山頂周辺の遊歩道から高層ビル群と港、対岸の九龍半島を一望。レパルスベイに移動し、人気を集める青い海と広い砂浜、その先に見える高級マンション街の景色を見ながら散策した。
買い物は高級品から日用雑貨まで、香港土産を品定め。上海、広東料理は共に、なじみのない食材も多く並び、日本と異なる食文化をじっくり楽しんだ。
初めての海外旅行という石岡市の大木誠一さん(28)は「(密集した)高いビルと海の組み合わせの風景がきれいで感動した。記念写真も撮ったので、部屋に飾りたい」と笑顔。
坂東市から参加した長谷川清美さん(41)は「食べたことのない料理を味わえ、うれしかった」と声を弾ませた。
旅行3日目の28日は、香港歴史博物館などを訪れる予定。

(2016年11月28日付茨城新聞掲載)

高層ビル群を背景に記念写真を撮る参加者たち=ビクトリアピーク山頂周辺
公園や博物館見学 笑顔で記念写真撮影

障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第19回希望の翼」の一行148人は28日、香港の九龍公園の散策や香港歴史博物館の見学を楽しんだ。昼食には点心料理に舌鼓を打ち、旅を満喫した。
同公園は繁華街に囲まれた約14ヘクタールの都市公園で、希望者が散策に参加。亜熱帯の木が生い茂る先に高層ビルがそびえ、池ではフラミンゴが羽を伸ばす風景を楽しんだ。同博物館は出土した青銅器や陶磁器、かつて存在した砲台付きの城「九龍塞城」の模型、伝統衣装などが並び、歴史や文化を学んだ。同館前広場には参加者全員が集い、旅の疲れも見せず笑顔で写真撮影。点心料理店で小籠包(しょうろんぽう)などを味わい、街中を巡った。
ひたちなか市の鬼沢徳一さん(68)は「公園の景色を楽しみながら、伸び伸びできてよかった」と笑顔。かすみがうら市から参加した斉藤裕子さん(62)は「博物館の展示が詳しく面白かったが、(旅行が)あと1日しかないので寂しい」と語った。
29日の帰国を前に、夜は「さよならパーティー」が催され、参加者が交流を一層深めた。

(2016年11月29日付茨城新聞掲載)

記念写真の撮影で手を振る参加者たち=香港歴史博物館前広場
共に踊り絆強める 友情の輪広げ帰国

障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第19回希望の翼」(茨城新聞社、茨城新聞文化福祉事業団主催)の一行148人は29日、香港での3泊4日の日程を終え、空路で帰国した。前夜は「さよならパーティー」が催され、参加者同士の絆を強めた。
香港滞在の最後のひとときはホテルなどで過ごし、参加者は旅の思い出を振り返ったり、記念写真を撮ったりして別れを惜しんだ。前夜のパーティーでは、同行した茨城新聞社や旅行会社の若手社員が〝恋ダンス〟を披露し、そこに障害者、ボランティアらが次々と加わって踊り、友情の輪ができた。
足が不自由で、初めて参加した水戸市の石神みとりさん(66)は「これまで旅行はあまり行けなかった。いろんな方の支えですてきな夜景など香港を楽しめ、世界が広がった」とうれしそうに話した。
ボランティアとして初参加し、ダンスに加わったつくば市の岡野光子さん(72)は「障害者も健常者も関係なく、楽しく踊れ、心が浮き浮きした。互いを尊重し、助け合えたこの旅を象徴していた」と笑顔で語った。

(2016年11月30日付茨城新聞掲載)

ダンスで盛り上がった「さよならパーティー」=香港のホテル
かけがえのない旅in香港(上) 見えた希望

■海外旅行、喜びや感謝
障害者に海外旅行を楽しんでもらう「第19回希望の翼」(主催・茨城新聞社、茨城新聞文化事業団)が11月26~29日に行われ、障害者や家族、ボランティアら148人が3泊4日で香港を訪れた。喜びや旅を通じた心の変化など、参加者たちの思いに迫った。 (今井俊太郎)

香港で最初の観光が〝百万ドル〟の夜景。ボランティアの介助で、車椅子のまま眺めのよい波止場に移動した坂東市の猪瀬久子さん(53)は「海外に来られたことが驚き」とネオンに見とれながら語った。
25年ほど前にリウマチを発症。足などの関節が徐々に動かなくなった。何度も医者を変え、手術をしても長距離の徒歩移動は不可能のまま。異文化に興味があり、以前はヨーロッパなど海外各地を巡ったが、国内旅行ですら困難になり「つらい思いが募った」。
希望の翼は知りつつも「どのくらい介助してもらえるのか不安」と、参加をためらっていた。第18回でグアムを訪れた友人の「楽しかった」という言葉に後押しされ今回参加を決意-。
「やはり本場の夜景はすごい。一歩踏み出したかいがあった。これからいろんな場所へ出掛けてみたい」。猪瀬さんは笑みをこぼした。

「人間の素晴らしさを感じた旅だった」。脊椎の神経の病気で、7年前からつえを使って生活する行方市の高柳長生(たけお)さん(64)は旅最後の夜、しみじみと話した。
海外旅行は今回が初めて。ボランティアら周囲の支えで長期の外出がかない、「積極的に声を掛けてくれたり、ずっと車椅子を押してくれたりして、心遣いが身に染みた」。
病気の影響で土木関係の仕事を退き、現在はリハビリを兼ねて葉物野菜の生産に取り組む高柳さん。人のぬくもりに触れ、「(農業は)楽しんでやってきたが、気持ちがもっと前向きになった」と声を弾ませた。

(2016年12月16日付茨城新聞掲載)

夜景の前で記念撮影する猪瀬久子さん(手前)=11月26日、香港
かけがえのない旅in香港(中) 家族の絆

■水入らず、距離縮まる
「見たこともない景色だね。きれいだね」
希望の翼の2日目、高層ビル群を望む香港島の最高峰・ビクトリアピーク。11年前のバイク事故で、左半身のまひと脳障害が残った渡辺智さん(52)に、妻の里美さん(53)がゆっくり話し掛けた。
「普段は感情が抑制されて表情があまり変わらない。旅行で、にこやかな表情が見られてうれしい」と里美さん。第17回のマカオ旅行から、毎回参加している理由でもある。
事故後は1年半近く寝たきりの状態が続いた。里美さんは一時、仕事もしながら介助を尽くし、リハビリ生活を支えた。今では旅もできるようになり、「夫と頑張ったかいがあった」と目を細める。旅行中、里美さんは渡辺さんが発する言葉一つ一つに耳を傾けた。「(家で)介護していると気持ちに疲れも出る。希望の翼ではたくさんの人が見守ってくれてリラックスでき、今回も夫との絆が深まった」とほほ笑んだ。

3日目に訪れた香港歴史博物館で、水入らずの時間を過ごす家族。小仁所(こにしょ)均さん(69)が乗る車椅子を次男の伴紀さん(39)が押し、妻の静江さん(67)が2人を見守るように付き添った。
小仁所さんは5年ほど前、庭木の刈り込み中の落下事故で全身にしびれが残り、1人で出歩くのが難しい状態。静江さんが希望の翼への初参加を計画し、介護福祉士として働く伴紀さんも「親孝行をしたい」と休暇を取った。
以前は「父と口を利かないこともあった」という伴紀さんだが、旅行などを通じ「徐々に父との距離は縮まっている」。車椅子を押しながら顔を近づけ、親しげに話し掛ける姿があった。
小仁所さんは「家族で香港に来られてうれしい。リハビリをもっと頑張ろうという目標もできた」とにっこり。その横で、静江さんも笑みをこぼした。

(2016年12月17日付茨城新聞掲載)

ビクトリアピークからの眺望を楽しんだ渡辺智さん、里美さん夫妻=11月27日、香港
かけがえのない旅in香港(下) 福祉の心

■これからも手助けを
旅行の疲れも見え始める3日目。幼なじみの女性2人が、九龍公園の広い敷地内で元気よく車椅子を押していた。ボランティアで初参加した常陸太田市の尾崎美雪さん(58)と佐川文恵さん(58)だ。
特別養護老人ホームでケアマネジャーとして働いてきた尾崎さんは「福祉全般に見識を深めたい」と応募。尾崎さんに誘われた主婦の佐川さんも、父親が介護施設の世話になった経験を踏まえ「誰かに恩返しをしたい」と参加を決めた。
2人は長時間、障害者に寄り添い、不便を知るなどして福祉向上の必要性を実感。さらに「人は人に支えられている。それを改めて感じた」と口をそろえた。
特に初日の雨の中、参加者たちが互いに助け合う姿が印象的だったという。車椅子の介助で手が空かない同伴者やボランティアに、ほかの参加者が傘を差す姿が見られた。
「これからも人の手助けをしていきたい」(尾崎さん)、「人生が広がった」(佐川さん)。2人の表情に充実感が漂った。

「(障害者の方の)自然な笑顔、生き生きとしている姿を見て、考えさせられるものがあった」
2日目、ビーチリゾート「レパルスベイ」の強い日差しの中、理学療法士の村田康成さん(47)は口元を引き締めた。
石岡市内の病院から、研修の一環で同伴者として参加。リハビリに携わり16年になるが、これまで障害者の生活に密着することはほとんどなかったという。
今回、ボランティアらの支えで旅行を満喫する参加者たちを目の当たりにし、「従来のように生活し、日常の楽しみが再びできるようになることが、どういうことか認識できた」と村田さん。
身体・動きの不自由さを軽減し、できることを増やす理学療法士の重責を肌で感じ、「(仕事の)モチベーションにつながった」と力強く語った。

(2016年12月18日付茨城新聞掲載)

九龍公園で車椅子を押す尾崎美雪さん(左)と佐川文恵さん(右奥)=11月28日、香港

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