第17回「希望の翼」(マカオ)
147人出発 茨城空港からマカオへ
障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第17回希望の翼」(主催・茨城新聞社、茨城新聞文化福祉事業団)の一行147人が27日、茨城空港からマカオに向けて出発した。
参加者は、県内各地から同日午後、茨城空港へ集合。同空港からチャーター便でマカオへ出発した。一行は30日までの4日間の日程で、マカオを観光。マカオタワーや、世界遺産に登録され、数々の歴史的建造物があるマカオ歴史市街地区などを巡る。
(2012年11月28日付茨城新聞掲載)
観光タワー「マカオタワー」訪問
障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第17回希望の翼」(主催・茨城新聞社、茨城新聞文化福祉事業団)の一行147人は28日、マカオ半島南西部にある観光タワー「マカオタワー」などを訪れ、地上223㍍の展望台の高さを味わった。
一行は27日夜遅く、コタイ地区にあるホテルに到着した。28日は曇り空で、一時は小雨も降ったが、マカオタワーを見学したほか、午後は巨大リゾート地「ヴェネチアン・マカオ・リゾート」でショッピングを楽しんだ。滞在先のホテルでは、現地添乗員から説明を受けた参加者がカジノに挑戦した。
マカオタワーの展望台は、床の一部がガラス張りで、地上からの高さを恐怖感たっぷりに味わえる。両親と参加した栗原由佳さん(41)=境町=は、恐る恐る床下を眺め「怖かった」と一言。石岡市の障害者支援施設「はーとふる・ビレッジ」から参加した清原祐紀さん(27)は「(床下が)良く見えて、怖かったけど興奮した」と元気よく答えた。
(2012年11月29日付茨城新聞掲載)
マカオ歴史市街地区を散策
障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第17回希望の翼」(主催・茨城新聞社、茨城新聞文化福祉事業団)の一行147人は29日、マカオで世界遺産に登録されているマカオ歴史市街地区を散策。かつてポルトガルに統治されていたマカオの歴史に触れた。
一行は同日午前、観光遺跡「聖ポール天主堂跡」を訪問。石畳の坂や階段を上り、丘の上にある天主堂前で記念撮影をした。
午後に訪れたパンダ館では、2頭のパンダを見学。参加者は、ボールを使って遊んだり、寝そべるパンダの愛くるしい姿に見入っていた。
東海村の障害者支援施設「幸の実園」の古神美穂さん(42)は「パンダはすごくかわいかった」と満足げ。車椅子で参加した平根二千さん(72)=日立市=は「見られて良かった。こっちを向いてくれないかな」とパンダにカメラを向けていた。
夜は、さよならパーティーが催され、親交を深めた仲間との別れを惜しんだ。
一行は30日に帰国の途に就き、同日夕に茨城に到着する予定。
(2012年11月30日付茨城新聞掲載)
思い出胸に笑顔の帰国
障害のある人たちに海外旅行を楽しんでもらう「第17回希望の翼」(主催・茨城新聞社、茨城新聞文化福祉事業団)の一行147人は30日、マカオでの3泊4日の旅を終えて帰国した。茨城空港にチャーター便で到着した参加者たちは、安堵(あんど)の表情と笑顔を見せた。
行方市の横井龍寛さん(49)は、父親の修二さん(78)と参加。「坂を上がるのが大変だったが、街がきれいで良かった」と話した。聴覚障害のある高萩市の伊橋正美さん(61)は、旅の思い出を撮影したカメラを見せ「楽しかった。また来ます」とにっこり。
車椅子で参加した水戸市の飛田捷昱さん(75)は「リフトがなかった場所では少しは自分で歩いた。リハビリになるかと思い、参加したので良かった。聖ポール天主堂跡では旅の冊子のような景色が見られた」と満足そうな表情を浮かべていた。
(2012年12月01日付茨城新聞掲載)
おもい紡ぐ旅inマカオ(上) 「初めて」の家族旅行
■異国でのひととき堪能
障害者とサポートする人たちがともに海外旅行を楽しむ「第17回希望の翼」(主催・茨城新聞社、茨城新聞文化福祉事業団)が、11月27~30日まで実施され、障害者や家族、ボランティアら147人がマカオを訪れた。さまざまな思いを胸に、異国でのひとときを満喫した参加者ら。旅先での姿を追った。(報道部・平野有紀)
「事故に遭ってから初めての旅行。一つずつできることをクリアしていくと世界が広がる。障害を持ったけど楽しいこともある」。建物内にゴンドラが行き交う運河まであるマカオの巨大ショッピングモール。非日常の風景を前に、渡辺里美さん(47)=土浦市=は夫の智さん(48)の車椅子を押しながら笑顔を見せた。
智さんは5年前、バイクの単独事故で重傷を負い、重度の脳障害が残った。突然の事故で生活は一変。旅行に行く時間や余裕などは持てなかった。
リハビリを続け、少しずつ回復を重ねてきた今年、希望の翼の存在を知った。「体調もいいし、今なら行けるかも」。周囲も、背中を押してくれた。
事故以来、初めてずくめの旅行。「何をするのも、楽しい」。一つ一つをいとおしむように、渡辺さんは答えた。介護に対応できるよう別々の部屋を使う智さんと、2人同じ部屋で眠るのも初めてだった。
旅の3日目に訪れた2頭のパンダが飼育されているパンダ館。
「文也は本当にパンダが好きだもんね」。上原祐子さん(57)=水戸市=が息子の文也さん(25)と笑い合った。
自閉症で知的障害を抱える文也さん。時に大声を上げたりすることが迷惑にならないか気掛かりで、団体での旅行は避けてきた。海外旅行のハードルは高かったが、旅の趣旨を知り、参加を決めた。父和也さん(65)も含めた家族3人の旅行は初めてだ。
行動を共にした、息子とは違う障害を抱えた参加者や家族との交流に励まされた。言葉を交わし、分かり合うこともできた。サポートしてくれる、ボランティアに頼ることも覚えた。「物見遊山だけじゃなく、得るものがあった。人っていいなって思いました」。上原さんは晴れ晴れした表情で、前を向いた。
(2012年12月25日付茨城新聞掲載)
おもい紡ぐ旅inマカオ(中) ボランティア
■分かち合い、支え合う
マカオタワーのロビーで、ボランティアの清藤光子さん(66)=水戸市=が携帯用のホワイトボードに文字を書いた。
「私は晴れ女だから大丈夫!」
天気を気にする聴覚障害者の大内きん子さん(74)=水戸市=らを明るく励ます。
ボランティアとして初参加の清藤さん。「来るまではものすごく不安だった」と言うが大内さんともすぐに打ち解け、笑いが絶えない。同じくボランティア初参加の飯島泰子さん(64)=鉾田市=と、聴覚障害者の伊橋正美さん(61)=高萩市=も一緒だ。
4人それぞれが初対面だが、筆談で距離を縮めた。清藤さんは「楽しい。手話を教えてもらってるんですよ」とうれしそう。
清藤さん、大内さん、飯島さんは女性同士同じ部屋。夜は3人でこれまで歩んだ人生の苦楽を分かち合った。清藤さんは11年前、夫に先立たれ、飯島さんは下半身まひの夫の介護に励む日々。「笑顔の下にもさまざまな思いがある。泣いたり笑ったりいろんな話をした」(清藤さん)。
五町とも子さん(58)、秋子さん(29)親子=常陸大宮市=は、ボランティアとして参加。車椅子で参加する谷内澄幸さん(67)、せつ子さん(64)夫妻=小美玉市=とは、6年前の希望の翼で知り合って以来普段から連絡を取り合うなど、家族ぐるみの付き合いもしている。
谷内さんは「『お父さん』と呼ばれたり、娘みたいな存在。気持ちも分かってくれるし、安心していられる」と感謝し旅を楽しむ。
山下進さん(63)=日立市=は、ボランティアで3回目の参加。バスでの移動時には、車椅子の参加者の介助など、サポート役に回るだけでなく、至る所でビデオカメラを回し、旅の思い出を記録し続けた。
「自分でも楽しみながらサポートしたい」と山下さん。「また来年も来たい。みんなで力を合わせて協力し合えば、楽しい旅ができる」と力を込めた。
(2012年12月26日付茨城新聞掲載)
おもい紡ぐ旅inマカオ(下) 明日への糧
■思い出あれば頑張れる
最終日の夕食時には「さよならパーティー」が開かれた。旅を通じて知り合った仲間と語り合い、ビンゴ大会などで盛り上がった。
東海村の指定障害者支援施設「幸の実園」からは毎回、利用者が参加。今回も職員らを含め33人が旅を楽しんだ。パーティーでは、利用者が歌を歌ったほか、旅の期間中に誕生日を迎えた古神美穂さん(42)が踊りを披露した。
ダウン症の古神さん。ピンク色の浴衣に着替え、アンコールも含め2曲分を踊った。即興で表情豊かに、踊る姿に会場からは温かな拍手が湧き上った。
会場が盛り上がる中、視覚障害者の君和田栄司さん(74)=鹿嶋市=が手を挙げた。指圧師の仕事で関わる鹿島アントラーズの試合に、希望があれば同園の利用者を招待したいと申し出たのだ。
利用者の姿に心動かされ「自分にできることがあればしたい」と君和田さん。旅をきっかけに新たな交流へとつながった瞬間だった。
「旅行に行けたことが一番良かった」。帰りのマカオ国際空港で土屋かおるさん(50)=土浦市=が安堵(あんど)の表情を浮かべた。娘のめぐみさん(26)も「楽しかった。行きの飛行機も乗れてうれしかった」と笑顔を見せる。
通勤途中に遭った6年前の交通事故で、高次脳機能障害を抱えるめぐみさん。希望の翼を知り、サポートがあるならばと参加した。初めての海外旅行。パスポートも取得した。
2人で外出することが多い日常と違い、他の参加者もいる異国への旅行。土屋さんは「十分楽しんだ。視野も可能性も広がった」と満足そうに話した。
長谷川文彦さん(50)=小美玉市=は毎回参加する常連さんだ。肢体障害があるため、車椅子で旅を楽しむ。
マカオタワーや世界遺産に登録されている街並み、観光遺跡「聖ポール天主堂跡」…。旅先の風景を大きく見開いた目で感じ、写真に収めた。普段は、画家として活躍している長谷川さん。帰国したら思い出を絵にするつもりだ。
「また来たい。楽しかった思い出があれば次に向けて頑張れる」。旅が明日への糧になる。長谷川さんに満面の笑みがこぼれた。
(2012年12月27日付茨城新聞掲載)